現在日本では5Gの実用化に向けて各社がエリアを急速に拡大しています。
超高速・低遅延で2時間の映画も即座にダウンロード可能。低遅延を活用したスポーツやエンターテイメントの観戦・観覧、自動運転での活用などに期待されている、まさに夢のような通信です。
この「5G」のエリアが拡大するにあたり、周辺が5Gエリアに該当するのかどうか確認する機会が多くなります。しかし5Gの場合、各社のエリア確認をするためには少し予備知識が必要です。
各社が示す5Gとは一体どのようなものなのでしょうか。
巷でささやかれる「なんちゃって5G」とは?
今回はその「なんちゃって5G」について、ユーザー目線で誰にでもわかるように今回も「吹き出し多め」で簡単にまとめてみました。
今回は5Gエリアについて書いてみたよ。
ん?5Gって速度が速くて便利なものでしょ?書くことなんてあるの?
うん。5Gって速くて低遅延ですごく便利って聞くよね。
なんか未来的っていうか。凄いっていうイメージだね。
ところが同じ5Gでも複数の種類が存在するんだよ。
え?そうなの?5Gってみんな同じじゃないの?
そう思うよね。そこを知ることで、今後の契約やスマホの購入に役に立つよ。
まずは5Gの種類から見てみよう。
5G NRとは?
5G NRの「NR」は4G LTEの「LTE」に当たる部分で「New Radio」(新しい電波)という意味。ちなみに「LTE」は「Long Term Evolution」(長い期間の進化)という意味です。
「5G NR」(以下5G)は複数の周波数で構成されており、3.7Ghz・4.5GHzがsub6、28GHzがミリ波(mmW)、そして現在の4G LTEの周波数を転用したもの(5G NR化:auでの呼称)とされています。
データ通信を行う際に周波数が高くなるほど高速通信が可能となります。28GHzが一番高く、まさに超高速・低遅延のデータ通信が可能な周波数といえます。反対に3.7GHzは4G LTE(以下4G)の3.6GHzに近く、超高速・低遅延ではあるものの4Gの延長線ともいえます。
周波数は高くなるほど高速通信が可能となりますが、その分直進性が強くなり、遮蔽物があると届きにくくなる性質があります。現在4Gで利用されているプラチナバンドといわれる700MHzは、低周波数のため遮蔽物を周りこみ電波が届きやすくなります。
難しい話はやめてもらいたいわ
要は周波数が高ければ高速通信ができるってことだよ。ここだけわかればいいよ。
ここでいう28GHzのことかしら。
そうだね。あとは5G専用に割り当てられた3.7GHzと4.5GHzのsub6もこれにあたるよ。
じゃあ、それを5Gと呼ぶならそれでいいじゃない。
ところがそうでもないんだ。
少し説明するね。
5Gの種類
sub6
sub6とは6GHz以下の周波数を指したもので、5Gには3.7Ghz・4.5GHzがあてられています。4Gの周波数に近く、ミリ波に比べ比較的広範囲に電波を送ることができます。
ミリ波
28GHzの周波数を指しています。かなりの高周波数で、遮蔽物が多いと狭い範囲にしか電波が送れません。遮蔽物の少ない競技場や広場など、遮蔽物のない人の集まる広いスペースでの利用に適しています。
5G NR化(転用)
現在の4Gで利用している周波数を5Gに転用して利用します。周波数が低く、遮蔽物があっても電波が届きやすい性質があります。電波は5Gとなりますが周波数は4Gのため、速度は4Gと同等となります。4Gの周波数を5Gに転用することを指します。
ふーん。
って、あれ?最後にポロっと出てきたのはなに?
これがいわゆる「なんちゃって5G」といわれるものだよ。
なんちゃって5G?
うん。
5G専用の周波数でアンテナ建てるってなると莫大な数の設備を改めて作る必要があるんだよ。
そうだろうね。
それじゃ5Gエリアが全然広がらないから、ソフトバンクやKDDIが今の4Gの周波数の5Gへの転用を認めるよう総務省に働きかけたんだ。
へー
それが認められて今の4Gの周波数を使って一部5Gとして転用できるよう省令を変更したんだよ。
でも速度が4Gと同じって書いてあるんだけど・・・
そりゃ、4Gの周波数を使ってるからそうなるよね。
でもスマホには「5G」って表示されるよ。
じゃあ、「5Gエリアだ!すげー!」ってなっても実は前と変わらないってこと?
「速度的」にはそういうこと。
だからなんちゃって5Gなのか・・・
ドコモの据置型ホームルーターは「sub6」対応になっています。
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これに対してドコモは慎重な姿勢を取っています。
中身(周波数)は4Gなのに5Gに見せるのは「優良誤認にあたる」のではないかという主張です。確かに速度面でいえば期待した数値にならなければ優良誤認といえるでしょう。
しかし、ドコモに関しても4Gからの転用は認めていて、自社でも行っていくと思われます。転用することの意義は認めてはいますが、まずは5Gの周波数を使った設備を整えていくうえでと考えているようです。
(現在ではドコモも5G転用を展開しています。)
ドコモまじめかっ!
ある意味正攻法と言えるね。
でもそれじゃあ、ドコモはエリアが広がらないじゃない。
そうでもないよ。せっせと設備増やしてるから。
でも一般的には5Gのエリアを確認するのに各社のエリアマップとか見るよね。
それしか方法ないからね。
その時にそれぞれを比較したらドコモだけエリアが狭く感じる可能性があるね。
確かに。
それでユーザーが誤認してドコモが不利になる可能性があるんだよね。
実際アメリカでは優良誤認に関する問題が起こったみたいだから。
そりゃ、普通は5Gって調べたらエリアが広いか狭いかだけだもん。
そうだよね。
それでは現時点(2021年6月23日)の各社のエリアマップを比較してみましょう。
各社の5Gエリアマップ
今回は大阪府で比較してみました。
(注:2021年6月23日現在のものです。最新のエリアを確認する場合は各公式サイトでご確認ください。)
ドコモ5Gエリアマップ
au5Gエリアマップ
ソフトバンク5Gエリアマップ
ソフトバンクの凡例が見えにくいので少しアップにしますね。
まぁ、比較するとやっぱりドコモが少し狭いというか、ところどころのようには感じるね。
転用のエリアも表示されてないし。
確かにauもソフトバンクも転用エリアが結構あるけど、sub6のエリアも各社思ったより広がってるっていうのが感想かな。
転用エリアをマップに表記するように言ってたのはドコモらしいよ。
そりゃあ不利に見られたくないもの。
ソフトバンクのエリアマップにも転用エリアに関してはしっかり注記されてるんだ。
ほんとだ。「4Gまたは4G LTEと同等」って書いてあるね。
っていうかワザと大きくしたでしょ。
まぁ、こういうところはある意味親切かもね。auは書いてないけど。
転用はなんとなく企業側のメリットで行われてる気がするけど、私たちにメリットはあるの?
企業側は転用することで5Gに完全移行をスムーズに行える利点があるね。
5G端末の販売も促進できるしね。
ユーザーとしては転用エリアであっても、従来の4Gよりは高品質な状態で提供されるからそこはメリットだね。
それもメリットのうちか。
端末のソフトウェアアップデート
各社の5G転用エリアで5Gを利用するには、それぞれのスマホでソフトウェアのアップデートが必要になります。
利用している端末が5G対応の場合、各機種ごとに各社からアナウンスされます。
各社のソフトウェアアップデート情報を確認しましょう。
ソフトウェアアップデートしないと転用エリアで5Gは利用できないよ。
スマホごとなの?
そうだよ。各社でアナウンスしているからしっかり確認してね。
5G対応スマホにおいても、どの周波数に対応しているかは端末ごとに違います。
sub6のみに対応している場合や、sub6+ミリ波まで対応している場合とがあります。
利用しているスマホや購入予定のスマホがどの周波数に対応しているか確認しましょう。
まとめ
今回は5Gの種類などについて、ユーザ目線で誰にでもわかるようにまとめてみました。
DSSやSAなど細かい技術的なことは多々あると思いますが、利用する我々は正直あまり気にすることはありません。
5G自体は転用で敷居を低くすることで広く認知させ、市場を活性化させるためには良い手法といえます。
実際にアメリカではドコモのような企業と転用を進めた企業がありましたが、速度は圧倒的に前者が速いにも関わらず、5Gへの接続率は圧倒的に後者の方が高かったという結果になっています。
顧客は5Gに繋がるかどうかだけを見ている場合が多く、結果、満足度においても後者に軍配が上がったという経緯があります。
日本では狭範囲で莫大な数のアンテナが必要なミリ波の普及は難しく、メインはsub6となります。
本当の意味で日常的に5Gを実感するのは、少なくともsub6の設備が十分に整うもう少し先のことになりそうです。
各社の努力でエリアが広がりどんどん身近になりつつある5G。
5Gの種類やエリアの確認方法を知っておくだけでも、今後の契約やスマホの購入に役立つかもしれません。